秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
アゼリア様は駆け寄ってきた子たちを宥めながら、よろよろと体を起こしていた。
男性から暴力を奮われ、全然大丈夫なはずではないのに、『大丈夫』と笑顔を作りながら。
今の件で気が動転し、泣き出した子もいる。余計な不安を与えないよう、心配をかけさせないための、アゼリア様の気遣いだ。
……だが、そこで終わりではない。
『ち……ちょっと、ルビネスタ公爵子息!』
異変を察知した令嬢が叫んだ。
目の前では、更なる信じられない状況が続いていたのだ。
追い討ちをかけるかの如く、地に座り込んだままのアゼリア様の元へと歩みを進めるアルフォード様。
腰に携えていた……剣を抜きながら。
ぶつぶつと独語をしている。
『ローズは、我々の女神……女神の言うことは絶対……』
その表情は、まるで修羅。憎悪に支配されたかのように冷たい目でアゼリア様を見下ろしていた。
そして、その剣先を向けて、こう言い放ったのだっだ。
『俺の女神を傷つける醜女よ。この正義の刃で切り刻んでくれる……!』