秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
……その奇行を最後に、アルフォード様は学園、いや王都から姿を消した。
卒業まで学園に姿を現さなかったという。
誰もその消息を知らなかった……というが、私はアルフォード様のお兄様、聖騎士団のランクルーザー様からマーガレットお姐さまを伝って話は聞いていた。
今回の件でルビネスタ公爵様が憤慨し、アルフォード様を領地に連れ帰り、邸にほぼ軟禁状態になっているとのことだった。
初恋の君を、複雑な思いで案じる。
あのお優しいアルフォード様が何故、女性のアゼリア様に向かって剣を振り翳したのか。
何故、こんなことになってしまったのか。
ーー何故、あんな冷たい表情を見せるようになってしまったのか。
だけど、数ヶ月後にこの公爵領で再会したアルフォード様は……私の知る、昔のアルフォード様のままだった。
温かく笑う、優しい彼のままだった。
なのに……また。彼の顔が、変わった。
情熱的にローズマリー令嬢を見つめるあの視線。……あの時、学園祭で見かけた時と同じものだ。
何故?どうして?
と、疑念もあるが、まず、あの悪夢の事件の際に居合わせたあのローズマリー令嬢の出現が、私を恐怖で包み込む。
また、あの人が現れた。
ーー恐い。
彼女の存在を恐怖と見做し、私は逃れるようにただ、ただ。
宛てもなく、走り続けた。