秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
第七章 指先に留まる赤い星
《きゃっ!アゼリアさん、恐いわ……》
……恐い。私にとっては、貴女の方が恐い。
王太子様をはじめ婚約者のいる殿方らを虜にし、侍らせ、神殿を批判する得体の知れない存在。
その庇護欲掻き立てる仕草の裏に見える、憎悪、敵意。
そして、この公爵領に突然現れてはアルフォード様の顔を、表情を変える。
アルフォード様を……あの時と同じような表情に変える。
(恐い……!)
「……んでー。ラヴィちゃん。ホントに来ちゃったの」
「……」
ローズマリー令嬢の存在だけを脅威に感じ、逃げるようにして宛てもなく走り続けた結果。
辿り着いたのが、ここ。夜会会場から少し離れた場所にある庭師さんらの宿舎だった。
訪れた際、「ラヴィ様?!何故ここに!しかもそのメイドの格好、何?!」と全員にびっくり仰天されたが、それでも温かく迎え入れてくれて、現在に至る。
ファビオの言う通り、やはり庭師さん夜会は開催されており、男性陣は酒をかっくらいながらカードゲーム。奥様方はご馳走をお酒のつまみにお喋りの会となっていた。