秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

王太子妃となった、そんなアゼリア様がくれたブレスレット。

……実は、ルビネスタ公爵領への出立の際、こっそり見送りに来てくださった王太子様から『アゼリアから』と、受け取ったものだった。

辺りが暗くなってから、コソコソと夜逃げのようにお兄様と神殿を出立する際。

神殿関係者の見送りがひとつもない中、王太子様だけがローブで身を隠してお忍びで来てくださっていた。

そして、アゼリア様から預かったブレスレットと共に言葉を私に託す。



『……すまない、ラヴィ。どうかアイツを頼む』



勢いで『はい!』とお答えしたはいいが、後でよくよく考えてみると。

『アイツ』とは誰のことか、さっぱりわからなかった。

(誰のことですか?王太子様……)

それに『すまない』って……?



心の中で問いかけるも、目の前にいないのだから返事が返ってくるわけでもなく。

でも、未来の素敵な国王夫妻のことを思い浮かべたら、気持ちが少しばかり持ち直したような気がした。



私も、あの時のアゼリア様のように。

最後まで諦めたらダメだ。



そう決意して顔を上げれば、一面畑の風景とは打って変わった近代的な街並みが近付いてきた。

ーーー領都、レディニアだ。






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