秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
「え。わざわざ探しに来なくても……」
「いえ。ラヴィ様にはきちんと食事をさせろと公爵の御命令ですから」
だからと言って、庭師さんらの宿舎に突撃してこなくても……みんな驚いてる。
まあ、最初に突撃してしまったのは、私ですけど。
黒髪をギュッと後ろに束ねて、背が高くてスッとした体形のミモザさん。ニコリともせずに、辺りをキョロキョロ見回している。
そして、テーブル席でカードゲーム真っ最中の庭師さんに一言告げた。
「あなた方、そこをおどき下さい。ラヴィ様の夕餉の時間です」
「はぁ?ミモザ、何だなんだ急に」
「ラヴィ様の給仕をしたいので。テーブルがここにしかないようですが」
「どけとは!ゲームの真っ最中に!」
「おっ。ミモザ、おまえ食べ物持ってきたの?こっち持ってこーい!」
「これはラヴィ様の夕餉です。あげませんよ。あなた方にも配給されたじゃありませんか。この人でなし。ハイエナ」
「そこまで言う!血も涙もない女め」
「お上品なご馳走なんぞ、もう食っちまったよ!美味かったよ!……まあ、ええわ!俺らにはラヴィ様がアク抜きして下さった、このワラビ草の和物があるからな?うめーぞ、うめーぞコラ!」
「テーブルなら、上の広間にもあるよ……」