秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

目の前に現れた私を、『居候のラヴィ』ではなく、メイドとして認識しているあたり、これはもう、『何らかの力で操られている』という私の推測が濃厚となってくる。

本当……なの?



「アル、そんなこと言っては可哀想よ。メイドさんにだって仕事があるのだから」



そこで、押しかけた私を跳ね除けたアルフォード様をに対し、ローズマリー令嬢が宥める。

私を庇っている発言なのだが、この人の為人を知っている私は、そう素直に受け止めることが出来ない。

すると、ローズマリー令嬢に声を掛けられたアルフォード様の表情がまたコロッと甘く慈しみのあるものに変わる。

「こんなメイド風情にも情けをかけるとは……ローズ、君は女神のようだ」

「もう、何を言ってるの、アル。私はただ人には優しく、と思ってるだけよ?」

「ああ、そこが君の良いところ、愛すべき美点なんだよ」

「もう、アルったら!」

また、歯の浮くようなベタベタなセリフが飛び出た。と、思ったら、私の背後からはブッと吹き出す音が聞こえてきた。

チラリと後ろを振り返ると、ファビオが口元を押さえて笑いを堪えている……。今のはファビオの失笑だったらしい。

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