秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

「女神、女神!美点だってよ!公子様、砂糖ゲロゲロ!……ぷぷっ」

「……」

小声ですが、私にはかろうじて聞こえてますよ。

こんなお砂糖溢れるセリフを真顔で吐くのを聞いて、笑いたくなるのもわかる気がするけど……今はそんな状況ではない、ファビオ。

私が真剣に対峙しているというのに、何笑ってるの!

後ろでは失笑する友人、目の前には満更でもないローズマリー令嬢、顔と体を寄せ合う二人の様子。

いい加減ウンザリし始めたところで……私は、目の当たりにしたのだった。

違和感、説明のつかない出来事を。



「私が女神だなんて、大袈裟よ?もう」

「謙遜することはない。何を言おうが、その言葉は君に相応しい」

「もうっ」


もう、が多い。牛ですか?と、心の中で毒を吐いた、その時。

私の体が、無意識にビクッと反応し、ザワザワッと鳥肌が立つ。

……何か、不快なものが通り過ぎた。

禍々しい、何かが。



そして……とうとう、現れたのだ。



ローズマリー令嬢の足元から、フワリと風が巻き起こる。

< 152 / 399 >

この作品をシェア

pagetop