秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
「女神、女神!美点だってよ!公子様、砂糖ゲロゲロ!……ぷぷっ」
「……」
小声ですが、私にはかろうじて聞こえてますよ。
こんなお砂糖溢れるセリフを真顔で吐くのを聞いて、笑いたくなるのもわかる気がするけど……今はそんな状況ではない、ファビオ。
私が真剣に対峙しているというのに、何笑ってるの!
後ろでは失笑する友人、目の前には満更でもないローズマリー令嬢、顔と体を寄せ合う二人の様子。
いい加減ウンザリし始めたところで……私は、目の当たりにしたのだった。
違和感、説明のつかない出来事を。
「私が女神だなんて、大袈裟よ?もう」
「謙遜することはない。何を言おうが、その言葉は君に相応しい」
「もうっ」
もう、が多い。牛ですか?と、心の中で毒を吐いた、その時。
私の体が、無意識にビクッと反応し、ザワザワッと鳥肌が立つ。
……何か、不快なものが通り過ぎた。
禍々しい、何かが。
そして……とうとう、現れたのだ。
ローズマリー令嬢の足元から、フワリと風が巻き起こる。