秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
色は、赤く。……だが、先程と違って、間近にいる今ならわかる。
その正体は、『赤い風』ではない。
小さな赤い粒子が、ちらりほらりと登場したのだ。
赤い光を伴った……てんとう虫が。
(同じだ……)
それは、私が王宮で幾度も見た、王太子様や令息らのあちこちに付着していた、あのてんとう虫と全くもって一緒だった。
更に、このてんとう虫たちが、ローズマリー令嬢から発されたものだと、しかとこの目で見た。
私の立てた仮説の一部が、一気に立証された瞬間だった。
「やめて……離れて!」
危機を悟って叫び散らす。
何故ならば、赤く光るてんとう虫が、アルフォード様の周りをちらりほらりと飛び交っていたから。
間近にして、そのてんとう虫からは禍々しいものを感じることに気付いた。
『人の意志を奪うもの』という推測がある、そんなものをアルフォード様に近付けてはいけない……!
「アルフォード様から……離れて!」
咄嗟に動いた私は、寄り添う二人の間に割り込み、両手でこじ開けるように引き離した。
「きゃっ!」
私に突き飛ばされる形になったローズマリー令嬢は、悲鳴をあげてふらっとよろめく。