秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

禍々しいてんとう虫は、ふわふわと風に乗って飛んでいた。

ローズマリー令嬢だけではない。これも追い払わなくては……!



「……おまえ!ローズに何をする!」



だが、そこでアルフォード様は私に向かって怒鳴り散らす。愛おしい人に突然危害を加えたという女である私に、怒りの矛先が向いた。

そして、今度は私が腕を掴まれて引っ張り上げられる。

力任せに、そのまま放り投げられてしまった。

「あっ!」

視界がぐるんと変わると同時に、床に叩きつけられ体中に痛みが走る。少しだけごろごろと転がってしまった。

「ラヴィ!」

「公子様、何をして……!」

後ろで見ていたファビオとミモザさんからも声が上がる。流石にこれには驚愕したようだ。

なんせ、あの優しい公子様が女性の腕を乱暴に引っ張り上げ、挙句に投げ飛ばす行動そのものが考えられないのだろう。私もそう思う。



(痛っ……)

体のあちこちに、痛みが響く。

……でも、そんなこと言ってられない。

あのてんとう虫を、禍々しいものをアルフォード様から追い払わなくては。

そんな一心で、痛みを堪えて立ち上がっては再び二人の方へと駆け出す。
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