秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
「ローズ、大丈夫か?」
「 え、ええ」
アルフォード様は、憐れみの表情で私に突き飛ばされたローズマリー令嬢に手を差し伸べているところだった。
手を取り合いながら甘く見つめ合っている二人の周りには……未だあのてんとう虫が取り囲むようにふわふわ浮いている。
その光景に、なお焦る。
(てんとう虫……だめ!)
そのてんとう虫を、近付けさせてはならない。
根拠は、ない。禍々しい何かを発しているから危険、ただそれだけ。
でも、そのてんとう虫があの王都での王太子殿下らの奇行を招いたものであると考えられると、寸分たりとも近付けてはならないと焦るのだ。
てんとう虫、絶対ダメ。
「……だめっ!」
再び二人の前に立ちはだかると、視界に光の伴ったてんとう虫が飛び込んできた。
まるで、二人の仲を裂こうとする邪魔者の私を、二人から守るかのように。
……けど、邪魔者だと思われようが何しようが、構わない。
細かく小さな標的を避けるため、顔を逸らして辺りを手でぶんぶんと振り払う。
この赤く光る星、てんとう虫は害なのだ。
ならば、私はこの害からアルフォード様を……守る。