秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

無数の赤い光を、アルフォード様から追い払う。

手をぶんぶんと振り回して、アルフォード様の体に付着したてんとう虫らを素手で直接払い除けた。

まるで、シーツの埃を払うかのように、バタバタと。

「……熱っ!」

手に痛みが走って、思わず悲鳴をあげた。

てんとう虫が直接触れた手だった。ジュッと音がした。熱を持っていたのか、焼けるような熱さを感じる。

……なんで、てんとう虫熱いの?!



だが、私と同時に悲鳴をあげた人がいた。



「あああぁぁぁっ!」

「……アルフォード様っ?!」



悲鳴をあげながら頭を抱えて、体を捻って悶え苦しみながら、地に倒れていく彼の姿が目に入った。

……いったい、何が?!

(アルフォード様!)



突然の変化に身を案じて手を伸ばそうとしたが、その手は届かず。

「ちょっと、アルに何をしたの?!」

そう言いながら、先程の可愛らしい表情とは打って変わって、目の吊り上がった敵意丸出しの表情で私の目の前に現れたのは、ローズマリー令嬢だった。

彼女の本性そのものが現れたといえる、鬼の形相だ。
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