秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

何故、投獄や裁判も無しにいきなり追放なのか?

それは、この事件を公にしないため……なんだと思う。

神に一番近い場所、聖域といわれた神聖な神殿で、こんな『毒で人を殺す』だなんていう事件は、まさに不祥事だ。

市井をも揺るがす醜聞を避けるための隠蔽、神殿ならやりかねないだろう。

あったことを、なかったことにするのだ。

臭い物には、蓋。

でも、まさか未成年の少女を野放しにするわけにはいかず。

そこで手を挙げたのが恐らく、昔から私と縁のあるルビネスタ公爵様なのだ。



どれもこれも、予想でしかないが。



……しかし、まさか『罪人』で追放された身として、このルビネスタ公爵領に来ることになるとは思わなかった。

いつも良くしてくれる、公爵様。

冤罪とはいえ、私が毒殺容疑をかけられている罪人だなんて知ったら、どう思うだろうか。

態度を変えて、侮蔑の眼差しで見られるのだろうか……?






「おーっ!おまえら、よく来たな!」



……いや、いつもと変わらない。普通だった。
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