秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
「だから、潜入してねえよ!話、通じねえなぁ?おい!頭大丈夫か!……それに、長子が聖騎士であり、代々聖力持ちを輩出していて、神殿を支援しているルビネスタ公爵家に神殿の批判なんぞ、本当に頭大丈夫か?……この事も含めて、侯爵に厳重抗議するぞ?」
すると、ローズマリー令嬢が急に真っ青になる。
「神殿の魔の手がここにまでも……!」
そう呟いて、私をギロッと睨み付ける。先程の庇護欲を唆ろうとする涙目も、被害者根性たっぷりの弱々しい仕草もすっかり消え失せていた。
「……御前、失礼します」
そして、ローズマリー令嬢はドレスの裾を摘んで、急いで走り去って行くのであった。
風のように撤収が早いのにも、驚いた。
ローズマリー令嬢の走り去る足音が消えて、姿も完全に見えなくなった頃。
公爵様が、「はあぁぁ……」と長いため息を吐いた。
「……やれやれ。話以上にイカれたお嬢さんだったな?神殿に対する被害妄想が激しいのなんの」
「神殿批判が凄いと聞いてましたが、これほどまでとは想像もつきませんでしたわ」
サルビア様もげんなりした様子だ。