秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
聞き慣れた甲高い明るい声より、グッと低く落とした声色で一言、私たちに投げ掛ける。
いつもと様子の違う、真剣な話し方の彼に戸惑ってしまった。
何が、大丈夫じゃないのか……?
「ファビオ……」
「恐らく、あちらさんは気付いたよ。一連の出来事は、ラヴィの仕業だと」
「わ、私の……仕業?」
「俺もこの目ではっきりと見たしね?」
そう言いながら、こっちにゆっくりと歩みを進めてくる。
普段の気さくな空気は消え失せて、真顔で淡々と語るファビオに戸惑いを隠せない。
それに、私の仕業……って、何?
私、何かしたの?ファビオは……何を見たの?
「ま、待て、ファビオ!」
戸惑う私を背中に隠すように、慌てて前に出てきたのは、公爵様だ。
私らの目の前に立つファビオと公爵様が向かい合うカタチとなった。
「公爵様も見てたでしょ?ここで起こった出来事を。我が主人夫妻の供述とほぼ同じだったってこと」
「そ、それはそうだが……」
「で、こっちの思惑通りになった。めでたし、それは良いのだけど……けど、まさかあちらさんの目の前で事が進んでしまったのは、予想外だった」