秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
領都の街並みを抜けて、馬車が停止した場所とは、ここら一帯では明らかに一番大きいお屋敷の真ん前だった。
誰が見てもわかる、御領主様のお屋敷。
「ラヴィ、ランティス、元気にしてたか?久しぶりだな」
お兄様に手を借りて馬車を降りると、一番前で出迎えてくれたのは、私らのよく知る金髪碧眼のおじさま。ヴォクシィ・ルビネスタ公爵様だった。
「お久しぶりです、公爵様」
「ラヴィも大きくなったな?昨年王都で会って以来か」
「そうですね」
降りて早々、この気さくな挨拶といつもの陽気な笑顔だ。いつもと変わらない、気取りのない公爵様の様子に拍子抜けというよりも、取り敢えずホッとさせられる。
「俺はそんなに久しぶりでもないですけどね」
「ったく、ランティスは……細かいことはいいから!取り敢えず中入れ!」
そうして、久しぶりの私と一言多いお兄様は、ルビネスタ公爵様に連れられて、屋敷内に案内されたのだった。
「しかし、ラヴィも大変だったな。まさか大神殿で騒ぎとわ」