秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
私の前を歩いていた公爵様は、歩きながらもふと後ろを振り返る。
唐突な話に、思わず肩を揺らしてしまった。
公爵様は、大神殿での出来事を知っている?
「あ……」
突然の振りに言葉を出せないでいたが、「ま、うちでゆっくりしていけ」と、いつもの調子で簡潔に告げた後、再び前を向いたのでまた拍子抜けした。
罪人として軽蔑の眼差しを向けられると思ったのに。
けど、これはそれで良かった。
昔から良くしてくれた公爵様に冷たくされてしまったものなら、それこそショックだ。
応接室に通されて、お兄様が私の隣に、公爵様と向かい合って座る。
室内の各所に置いてある高級そうな調度品がふと目に入って、さすが公爵家と思ってしまった。
目の前に出されたお茶のカップも、触れるには恐縮してしまうほど高級そう。中に淹れられたお茶も、香りが良くて色が綺麗だ。
質素な神殿とは全然違う。
「えっと、おまえらがこの公爵領に来るのはいつぶりだっけ?休暇を利用してランクルーザーと来た時以来か?」