秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

(よかった……)



どこにも異常はなく寝ているだけなのだとわかって、安堵の息をつく。

これでもし、アルフォード様の身に異常があったとなれば、心配で心配で私は公爵領を離れられないだろう。



(……アルフォード様)



心の中でその名前を呼び、傍へ赴く。

寝ている顔を覗き込む。顔色は若干良くないような気がするが、すやすやと安らかに眠っているような気がする。

相変わらず整った顔で、寝顔なのに見惚れてしまう……という、私のこの不謹慎さ。

だが、これからの決意のために、そんな邪な心は飲み込んだ。

寝具の上に無造作に放られた彼の手にそっと触れて、思いを込める。



……アルフォード様、私。王都に行ってきます。

私の詳細不明のこの聖力は、あなたや王太子様らを救ったまでは良かったのだけど。

それ故に、私のこの不明な聖力のせいで、もっと大変なことが王都で起こるような気がする。

ローズマリー令嬢の企でこの国で何が起こっているのかも、自分の詳細不明な聖力のことを知るため。

あなたが何故、悲しい思いをしなければならなかったことを知るためにも。

私は……王都に行ってきます。
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