秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
私の疑問を代弁して問いただしたのは、隣に座るミモザさんだった。
心にふと思ったこのタイミングで本人に問う?……心の内を見透かされたと思って、内心ビックリだ。
問い詰められたファビオは、というと。
「え?俺?俺は何者かって?……しがない庭師見習いですよん?」
そう言って、懐から剪定バサミを取り出し、いつものふざけた感じでニッと笑いながら、シャキシャキシャキと小刻みに動かす。
そんなファビオを見て「チョキチョキしなくて結構です」と、ミモザさんは冷静に一言返していた。
「ただの庭師見習いが、社交界での旬の話題の詳細を知るはずがないでしょう。しかも、随分深いところまでご存知じゃないですか」
「えー。そう?だいぶ有名な話だぞ?トルコ風呂令嬢のハーレム事件は」
「王都住まいでもないのに、平民が知る話ではないですよ」
「大衆紙にもこの話、載ってるぜ?」
「……誰の遣いですか?公爵邸に身を置いた理由は?」
淡々とファビオを問い詰めるミモザさん。
ファビオは依然、ふざけた態度なのだが。
「まあー。俺の正体、こんなもの持ってる感じ?」