秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

チャリンと金属の擦れる音がする。

ファビオが首にぶら下げていたペンダントのチェーンを引いて、服の中に隠れていたプレート状のペンダントトップを私たちに見せた。

……それを見て、ミモザさんと共に驚愕したのは言うまでもない。

「こ、これは……!」



ペンダントのプレートには、アゼリアの絵が刻まれている。紫色のガーネットの宝石もあしらわれていた。

……これは、婚姻の際に新しくした王太子様の紋章だ。



「貴方の主は、王太子殿下でしたか」

「うーん、ちょっと違う。本来の主の命で、今はこの御方の下に着いている。レンタルされてんの、俺ー!」

「れんたる?」

「駆り出されてるってことよ!」

そう言って、ガハガハと笑うファビオ。

笑い事じゃないですよ?

ペンダントプレートを持っているということは、側近同等の近しい存在であるということ……!

ファビオは、王太子様の側近に近い存在なのだ。



「平民の貴方がそれを持ってるということは、影ということですか」



ミモザさんの突き付ける一言に、私はゾッとした。

影、すなわち暗部。

ファビオが暗部の者……!

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