秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
しかし、そんな弁解には少しも耳を貸さず、婚約者の令嬢らは言葉と態度で傷付けられ、まるでゴミのように扱われ、婚約破棄を散らつかされる。
突然現れた恋敵に、政略結婚と純真な想いとの板挟みになった令嬢たちは、泣き寝入りをするしかなかったのが現状だった。
特に、王太子エリシオンの令嬢に対する溺愛ぶりは半端ではない。
令嬢を常に傍に置き、その身を離さず愛を囁いた。
このように、婚約者でもない未婚の令嬢を傍に侍らすなど、王室の威厳に関わる醜聞。
だが、王太子の側近らも苦言を呈するどころか、寧ろ自分の愛する令嬢と王太子の想いが添い遂げられるよう尽力したり、その身を退いたりする者もいるという、何らおかしな状況となっていた。
そして王太子はとうとう、長年の婚約者であるアゼリア・ガーネット公爵令嬢との婚約を破棄し、懸想している令嬢を自分の妃にしたいとまで言い出したのだ。
社交界では、アゼリアとの婚約破棄、そして令嬢との婚約が貴族学園の卒業パーティーで宣言されるのではとの噂で持ちきりだった。
……そんなことが許されるものか。