秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
「そうですね。五年は経ってるようですよ」
公爵様の質問に、あたかもわかっていたかのように即座に返答するお兄様。
さっきまで忘れていたくせに。
「……そうだ。ランクルーザーはちゃんとやってるか?まさか王太子殿下の結婚を機に近衛騎士団がそっくり入れ替えされるとはな」
「ええ、しかもランクルーザーは、神殿から王宮への大抜擢ですから。聖騎士団にいた時よりも忙しいとボヤいてましたよ」
「はは。忙しくて女に会えないからか。あの愚息は……」
こんな感じで、お兄様と公爵様は話に花を咲かせている。
私は、黙って話を聞きながら香りの良い紅茶を口にしていた。
そんな二人を眺めていたその時、応接室の扉がノックされる。
「父上、アルフォードです」
扉の向こうの声を耳にすると、公爵様は私らの方を改めて見てから「おう、入れ」と扉に向かって言い放つ。
ガチャリと音を立てて開いた扉からは、公爵様と同じ、金髪に紫眼の青年が姿を現した。
こちらに向かって軽く一礼し、上げたその顔を目にして……私は、息を呑んだ。