秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
髪と瞳の色は同じでも、公爵様に似ても似つかない、中世的で綺麗な顔立ちは母方寄りなのだろうか。
顔立ちだけなら、昔は女の子と間違えそうだったが、時を経て現在は背も高く、体つきも逞しくてまるで騎士のようだ。まさに、美丈夫とはこのことだろう。
私は……その顔を忘れていない。
ルビネスタ公爵さまの次子、アルフォード・ルビネスタ公子。私より五つ歳上の、19歳。
《この公爵領のラベンダー畑が名付けの由来だなんて。……それは、とても素敵な話だね?》
……一緒にあのラベンダー畑を見て、私にそう言った。
あの時の、彼だ。
笑顔の中に輝いていたアメジストのようなこの綺麗な瞳は、今も変わらない。
変わらず、素敵だ……。
公爵様に手招きされて、アルフォード公子様はこちらにやってくる。
記憶の片隅に残っていた少年の姿を、私は黙って目で追っていた。
そんな彼は、お兄様の前でまた軽く頭を下げる。金色の髪がフワリと揺れた。
「これはこれは、タンザナイト伯。お久しぶりです。学園在籍中は、剣技の講義で大変お世話になりました」
「久しぶりだな、アルフォード。元気そうだな」