秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

妃であるアゼリア様の隣に寄り添いながら、私に優しく声をかける王太子様。

王族の微笑みが、柔らかくて尊い。

……ローズマリー令嬢の隣に侍っていた時の、あの怖い表情はすっかり面影もない。



「ラヴィ、君を出迎えている者は他にもいるよ」



そう言って、王太子様は後ろをチラリと振り向く。

そこには、見知った顔の方々が。



「ラヴィ、大変だったわね?お帰りなさい」

「よう、ラヴィ!ルビネスタは変わりなかったか?」

「ま、マーガレットお姐さま、ランクルーザー様!」



私の姐聖女であるマーガレット・ディランブル侯爵令嬢。

そしてアルフォード様のお兄様であり、マーガレット姐さまの恋人でもある。現在は王太子様の護衛騎士をしている聖騎士のランクルーザー様だ。

二人揃って、ここで私を出迎えるなんて、どういう……と、いう疑問の前に、マーガレット姐さまの顔を見ると、私の胸の中に押し込めていた不安や、気掛かりだった事が一気に溢れ出てきたのである。

「お姐さま!マーガレット姐さま!……神殿は大丈夫ですか?みんなは、みんなは無事ですかっ?!」
< 213 / 399 >

この作品をシェア

pagetop