秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

学園在籍中?お兄様は学園側に頼まれて、生徒の剣技指導を担当していた時期がある。その時に顔でも合わせたのだろうか。

すると、二人のやり取りを眺めていた公爵様が口を開いた。



「アルフォード、そちらがうちで預かることになったお嬢さん。ランティスの妹、ラヴェンダーだ」



唐突に紹介されて、慌てて席を立つ。公爵様、急すぎる!

「ら、ラヴェンダー・タンザナイトと申します」

ぎこちない礼で拙くなってしまった。

「……ラヴェンダー?」

アメジストのような瞳を丸くさせ、キョトンとしている。

ラヴェンダーなんて変わった名前だから、驚いたのだろうか。

しかし、それは一瞬で。彼……公子様は、そんな私にニコリと笑いかけてくれた。

……あの時と、変わらない笑顔で。



「初めまして、ラヴェンダー嬢。アルフォードと申します。タンザナイト伯の妹である貴女を、ここで預かることになったと父から聞いています。どうぞよろしく」

「……は、はい、よろしくお願いします」



一瞬固まってしまったが、すぐに我に返って頭を下げる。



(……初めまして、かぁ)



やはり、彼は私のことを覚えていなかったのだと。

『あの時』以来、改めて身に染みてしまったのだった。




< 22 / 399 >

この作品をシェア

pagetop