秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
「ーーーアルフォード、おまえ。『初めまして』じゃねえぞ?昔、ラヴィが公爵領に来ていた時のこと、忘れたのか?」
私たちの間に、そんな過去の話を唐突に投げ込んだのは公爵様だった。
「……え?」
思いもよらない話を吹っ掛けられて、目を丸くして首を傾げたのは、アルフォード公子様だった。
私はギョッとする。
公爵様、本当に唐突すぎる。公子様が戸惑っているでしょう。
だが、そんな私の気も知らずに、公爵様はズケズケとその言葉を続けるのだった。
「あれは五年前か?ランクルーザーが長期休暇で、上司であるこのランティスをレディニアに連れてきただろう。その時に一緒にくっついてきたのが、ラヴィだ。おまえも一緒に屋敷の裏にある花畑を案内しただろう?覚えてないのか?」
「……」
記憶になかったのか。父から次々と明かされる過去に、アルフォード公子様は目を見開いたまま固まっていた。
時折、私の方をチラリと見ながらも。
……目が合うと、心臓がドキッと大きく高鳴る。
彼の顔が美しいから、だけではなく。昔から……想い続けていたその姿を、目の前にしているからか。