秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
「神託の儀が終わったら、ささやかなお祝いでもしましょう?」
「みんなにも声掛けてあるからね?」
加えて姐聖女らのお祝いの言葉が嬉しくて、もう感動で涙が出そうになる。
だけど、嬉し泣きしている場合ではない。これから、大事な儀式が待っているのだ。行かなくてはならない。
「さあ、ラヴィ。中で大聖女様が待ってますよ」
神官長が扉を指して言う。私も頷いた。
「……では、行って参ります」
私を囲む神官長らや姐聖女らに頭を下げる。
一歩後ろには、呑気に手を振っているファビオと、綺麗な姿勢の直立不動のミモザさんがいた。
「俺たちゃ、ここで待ってるからなー?頑張ってこーい」
「ラヴィ様のお帰りをお待ちしております」
……頑張ってこいと言うほどのこともないのですけどね。お帰りをお待ちされるほどのことでもないですが。軽いし、重い。両極端。
そんな様々な人らを背にし、私は儀式の間の大きな扉を一人で開けた。
ギィィ、と重々しい音が響く。
開けた扉の隙間から暗闇の中でひとつ、小さな光が見える。
私は息を呑んでから、中へと足を踏み入れた。
扉がバタンとゆっくり閉まる。