秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
……ここからは、一人。大聖女様と、精霊界に繋がるといわれている神託の水晶と泉の元へと歩いていくのだ。
儀式の間の中は、照明がない。水晶と泉が放つ聖なる光が周囲を僅かに照らす。
煌々と射す光の元へと足を進めていった。
「……ラヴィ、お待ちしてましたよ」
光の方角から、長く慣れ親しんだ人の声がした。思わず足を停めてしまう。
神々しい白っぽい光を放ち続けている泉の上に浮かぶ水晶。……神託の泉と水晶だ。
その傍に一人、佇んでいるように立ってこちらを見ている。
白い法衣姿の、壮年の女性。
「大聖女様……」
「こちらにいらっしゃい」
「は、はい」
言われた通りに、再び足を進めた。左手を広げて私を迎えており、私も腕の中に飛び込むように大聖女様の横に寄り添う。
「ラヴィ、よく戻ってきてくれました。貴女には本当に辛い思いをさせてしまって、すみません」
「いえ、大聖女様。もういろんな人に謝られすぎて、こっちが恐縮してしまいます。もう、おやめください」
「まあ、貴女という子は」
本当に。王都に戻ってきてから謝られ過ぎているので、これは本音だ。