秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

泉の傍には本が開いたまま置いてあった。古めの大きい本だ。

「大聖女様、それは?」

チラリと覗き込むが、何やら見たことのない字が羅列されていて読めない。……どうやら、古代語で書かれているようだ。

つまり、神殿内に厳重に保管されている、門外不出の蔵書だ。

「【秘匿されし聖女】に関する文献、歴史書です。……ラヴィ、貴女の与えられた【浄化】の力について説明しましょう」

「はい」

息を飲む。私のこの奇妙な聖力の正体かすぐそこに。そう思ったら、拳に力が入った。




ーー【浄化】の聖女。

名の通り、邪気を【浄化】をする力だ。

大地や植物に侵食する邪気、人の体内に滞った邪気など、『人体に害する』ありとあらゆるものを浄化してしまう。

その頭、指先から足先まで身体中に【浄化】の聖力が漲っていて、浄化の聖女が触れた部分全てに【浄化】の作用が働く。



「人体に害するものを浄化……」

「【浄化】の聖女が228年前に御世界に実際現れた時は、邪気に侵された王国の土壌と水を浄化させ、国を救ったと記載されています」

「……」

言葉を失ったのは、言うまでもない。私自身にもその心当たりがあったからだ。

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