秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
「五年前というと、王都の学園に入学する直前の時ですか。……あぁ、あの時期は、父上が私の婚約者探しと言って、多数の令嬢を次々とこのレディニアの屋敷に呼んでは、花畑を案内していたでしょう?出入りしていた令嬢が多すぎて、誰が誰だか」
「お、そうだったか?……あ、そうか。アルを巡って、令嬢たちが喧嘩をおっ始めちゃったってやつか?」
「……ええ」
「で、おまえは未だに婚約者を決めず」
「うるさいですよ」
そう言って、公子様は自分のお父上をジロリと睨む。
眼差しに憎悪がこもっている。まるで、その時期の嫌なことを思い出したかのように。
……まあ、これほどのルックスだ。美丈夫な公子様を令嬢らが取り合いとなった、諍いのひとつやふたつありそうだ。
けど、婚約者、いないんだ。
だが、そんなことは置いといて、公子様は表情をサッと笑顔に変えてから、こっちに視線を移す。
「……しかし、多数の令嬢がいたとはいえ、覚えていなくて大変申し訳ありません」
「い、いえ」
そして、申し訳なさそうに頭を下げられる。そんな恐縮な。