秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
「そんな話が!」
そのような話は、聞いたことがない。
お母様が、お父様や公爵様らと王族や国を救った?なんてカッコいいのだろう!……落ち着いたら公爵様にぜひお聞きしなければ。
ーー続きを聞きたいのは山々だけれども、興味深い昔の思い出話のその前に。
まずは、やらねばならないことがある。
(……全ては、明日)
この、事件の終焉を見届ける。
今一度、自分自身に確認し発破をかけていた。
ーーその時だった。
「ーーねぇ、【秘匿されし聖女】って何?」
(……はっ!)
その鈴を転がしたような高い声に、全身の毛という毛が逆立つかの如く、虫が這うような感触の寒気が走った。
儀式の間には、私と大聖女様しかいないはず。
なのに、第三者の声が聞こえてくるなんて、おかしい話だ。
「……ラヴィ!」
振り向いて、その姿を視界に入れると同時に、大聖女様に身体を抱き込まれて庇われる。
だが……いるはずのない人の、あり得ない登場に全身だけではなく、思考も固まりそうになった。
そこには、何故かいたのだ。
ピンクブロンドの髪を靡かせた、豊満な肢体を持つ、妖艶で美しい彼女が。
(……ローズマリー令嬢!)