秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
『アル、貴方はそのままで十分素敵なんだから』
『……ならば、前を向いて今の自分に出来ることをした方が良いのでは?って』
愛してる?違う?愛してる?……違う?
『悔やみ続ける毎日より、自分の出来ることを考えて励む毎日の方が良いに決まってます!』
……そうだ。
俺ーーアルフォード・ルビネスタに必要だったのは、劣等感に塗れた自分を肯定する言葉ではなく、そんな自分を鼓舞する言葉だったんだ。
居心地の良い、甘い薔薇の香りがする人の傍ではなく。
辛いことがあっても、背筋を伸ばしてひたすら前を向いている。
ラベンダーのような爽やかな香りがする人の、隣……。
『ラベンダー畑で、待っていて下さいね……』
(……はっ!)
理由のない激しい焦燥に駆られて、ハッと目が覚めたそこは、自室の寝床の中という見慣れた風景だった。
だが、何故ここで寝ているのか。重い頭と汗まみれになっているこの状況がわからず、混乱する。
(何が……)
記憶が曖昧で、ごちゃごちゃとしていて。
……でも、何があったか覚えていないわけではなくて。
(夜会に、ローズが……でも)
でも、そこで自分は何をどうしたのか?