秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
『権利』という言葉が琴線に触れてしまったのか、まあ出てくる出てくる父の不満。
やらかしてしまった自覚はあるので、そこは何も言えない。そこは。
目の前の男が、そんな自分の尻拭いに奔走してくれたからこそ、今現在、自分は領地で静かに過ごしていられるのだ。そんな父に対して偉そうな言い方だったかもしれない。
……だが、今はこんなお小言に説教をくらう時間でも、反省する時間でもないのだ。
「でも、こうなってしまったのには自分にも責任はあります。ですので、王都へのご同行を!」
「行かせるわけねえだろ!やらかしの張本人を連れて陛下の御前に参上出来るか?めでたい野郎だな!てめえもお花畑か!」
「ですが!」
「それに、そんな弱りきった体で何が出来るんだよ。足手纏いは要らねえんだよ!取り敢えず、てめえは留守番だコラ。このダメ男」
「……」
父の話し方が貴族らしかぬ破落戸のように乱暴なものになっている。
これはもう、何をどうしようが話を聞いてもらえる余地がない。
「わかったなら、おまえはここでおねんねしてろ!お花畑!」