秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

何故?……何故?

時間が経つに連れて冷静になり、あの時の自分が不可解で恐ろしくなる。

自分自身にただただ疑念を持ち、後悔しかなかった。

そんな自分が、再び剣を持つ……許されるのか?



(……いや)



『悔やみ続ける毎日より、自分の出来ることを考えて励む毎日の方が良いに決まってます!』



……そうだね、ラヴィ。

くよくよ悔やんでいるよりも、今の自分に出来ることを。

前を向いて進め。教えてくれたのは、紛れもなく君だ。

薄暗い部屋の中で過去の誤ちを悔やみ続けるよりも、太陽の下に出て前を向いて笑っている方が良いに決まっている。



手の震えを堪えて、剣を手に取る。

数ヶ月ぶりに帯剣し、邸を飛び出す。馬番のいない厩舎に駆け込み、自分で勝手に馬を出して乗り込み、すぐさま出立した。

ラヴィは恐らく馬車で移動している。単騎で夜通し駆け出せば、追いつけるか?差は一日。王都までだと追いつくかどうか微妙な距離。

でも、形振り構っていられず、ただ衝動で馬を走らせた。

……そんな自分の様子を邸の窓から見守っている者がいたとも、知らずに。






「あら、やだ。本当に行っちゃったわよ?」

「散々煽ってやったんだ。あれで行かねば男じゃねえよ」

「あの子にしては随分無鉄砲ね」

「ダメ男挽回するには、こんな時こそ思い切ってくんなきゃ困るってえの」

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