秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
王都でのやらかしが原因で領地に連れ戻され、自分への疑念と後悔に苛まれ、失意のどん底にいた自分の前に現れた彼女。
今一度己と向き合い再起せよ、と言われているような気がして。
……運命というものは、本当にあるのかもしれない。
それから、公爵領での彼女ーーラヴィとの生活が始まる。
一応、伯爵令嬢であるラヴィだが、下位貴族や平民の娘に混じって神殿で忙しく働いていたようで、一般の貴族令嬢とは一風違う生活を送っていた。
朝は早いし、優雅なお茶の時間を取る事なく使用人に混じって働く。
刺繍を嗜むのではなく、使用人に混じって針仕事を行う。……父が泡食って制止する光景を面白く感じた。
当の本人はそれでも下働きを続けていたが。結構頑固なんだな。
時間を持て余しているからでは?と、母による淑女教育の時間を設けたが、神殿で下働きの日々だった割には、勉学やマナーは合格点程度に備わっていたようだ。
それもそのはず。古い名家の貴族である、あのディランブル侯爵家の令嬢に指導してもらっていたのならば、納得だ。
だが、淑女教育の時間が終わると、また使用人に混じって働く。
もう、労働と彼女を切り離すことが出来ず、両親は旗を上げたようだ。