秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

ーー精霊王の思し召し。

ラヴィがよく言っていたな。さすが、大神殿勤務の見習いだけあって信仰心が強いと苦笑いしていたが。

今なら、その一言に大いに頷けるかもしれない。

公爵領でラヴィと再会したのも、ラヴィを追って王都に来たのも全て、精霊王が導いたのではないか、とーー。



ならば、仰せの通り。

自分にしか出来ないことを、今ここでやるしかない。

怖がらずに、前を向いて突き進むしかないのだ。

……大神殿に行かねば。



「エリシオン、俺は大神殿に……」



そう言いかけた、その時。

窓の向こうから、ズゥゥゥン……と、地鳴りのような音が耳に入り、異変を察する。

途端に、応接室の窓ガラスがビリビリと震え、建物も若干揺れた。

「……何だ?!」

エリシオンも異変を警戒して、バッと立ち上がっている。

「外か?」

二人一斉に、バルコニーの方へと向かい外に出た。

……だが、そこで見たものとは、身を震え上がらせるような光景だった。



王城のバルコニーから見渡せる、城下町。市井の景色。

西の方角のとある一点から、煙が立ち昇っている。

「何だ?……賊の襲撃か?!」
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