秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
住み慣れた神殿を突然追われ、数日の長旅。
ルビネスタ公爵夫妻との再会に、まさかの……あの『彼』とここで再会。晩餐。
ようやく一人になった今、緊張で張り詰めた空気が緩やかに解けた瞬間だった。
ドレス姿のまま、立派なベッドに敷かれたフカフカのお布団にボフッと倒れ込む。
「……」
……そこで浮かんできたのは、何故か。先程久しぶりに再会を果たしたアルフォード公子様の顔だった。
公子様、相変わらず素敵だったなぁ。
《この公爵領のラベンダー畑が名付けの由来だなんて。……それは、とても素敵な話だね?》
屈託のない、心からの笑顔を見せる『彼』と。
《俺の女神を傷つける醜女よ。この正義の刃で切り刻んでくれる……!》
憎悪に支配された、修羅のような表情をしていた『彼』。
……これが、同一人物だとは思えない。
何故なのだろう。
何故、彼はあの時。あんなことを言い放っていたのか。
いくら考えても、一人で考えこんでいたところでわかるはずもない。
そうしているうちに、私の意識は深い闇の底に沈んでいったのだった。