秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
足場が無くなりスカッと落ちていく感覚に、思わず悲鳴をあげてしまった。
「わぁっ!……大聖女様!」
呼びかけに返答はなかった。大聖女様がそばにいるとわかるのは、私を抱く腕の温もりだけだった。
「きゃっ!」
足元が崩れ、床が抜けて階下へ落ちたのだろう。階下の床に全身を叩きつけられ、痛みが走る。
……だが、目の前は痛みに悶える間もない状況となっていた。
儀式の間の真下にある薄暗い地下室は、階上から崩れて落ちてきた瓦礫だらけで砂埃が舞っている。
なんという有り様だ。神殿が破壊されるなんて……!
ローズマリー令嬢のあの邪気で?強固な結界を張ってある神殿を破壊出来るほどの、強い邪気を持ってるの?ローズマリー令嬢は!
……ローズマリー令嬢はわかっているのだろうか。神殿への襲撃は、国教への謀反と見做される重罪ということを。
いったい、何を考えて……!
少し離れたところに、直前まで私を腕に抱き留めていたはずの大聖女様が倒れているのを目にして、血の気が引いた。
「……大聖女様!」
ふらつきながらも立ち上がって、大聖女様のもとへと駆け寄る。