秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
「大聖女様、大丈夫ですか!お怪我はありませんか?!」
「ラヴィ…‥私は大丈夫ですよ……」
手を貸すと、大聖女様はよろよろと起き上がる。大丈夫とは言うが、痛みがあるのか顔が歪んでおり、息切れもしている。大丈夫ではない。
私がほぼ無傷なのは、恐らく……落下時に大聖女様が庇ってくれたのだ。
どうして、こんなことに!
お姐さまらを呼んで、早く手当をしないと!
この状況、まずは何をしたらいいか、辺りをキョロキョロ見回していると……いた。
視界に入れた途端、鳥肌が立つ。同時に苛立ちをも覚える。
「質問してるのに、関係ないはないでしょ?」
赤い邪気をふわふわと纏わせたままの、ローズマリー令嬢だ。
暗に『教えない』と言っているのにその返答。なんて自己中心的な思考だろう。
ピンクブロンドの髪を揺らしながら、こっちにゆっくりと歩いてくる麗しの美少女。
……だが、表情は発言の通りか歪ませていて、憎々しげに視線を送られる。
「……こっちに来ないで!」
負傷している大聖女様を背に庇い、私も負けじと睨み返す。
ローズマリー令嬢の眉がピクッと動いた。