秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
しかも、『夜伽』だとか『脱いだ』『抱かれる』だとか、純潔必須の貴族令嬢なのに、あっけらかんといかがわしい言葉を連発しているのには頭が痛くなった。
男女の秘め事を恥ずかしげもなく喜んで話すその様子はまるで娼婦のよう。貴族令嬢には死んでもあるまじき行為だ。はしたない。
邪気に侵されて、頭がおかしくなっているのだろうか。
この令嬢はいったい……何者なのだ。
ローズマリー令嬢の妄想という未知なる世界の話に、大聖女様と二人で絶句している中。
私らの様子に目もくれず、彼女は流暢に喋り続けていた。
ーー流暢に語り続けるローズマリー令嬢の話とは、こうだ。
この世界は、
【アフロディーテの愛が世界を救う】
という、乙女げーむ?の物語の世界だそうだ。
ヒロインは王都の市井で暮らす少女、ローズマリー。
……ここにいるローズマリー令嬢のことらしいが。
母一人子一人で貧しく暮らしていたローズマリーだったが、トルコバス侯爵領へ赴く機会があった。
そこで侯爵領にある『アフロディーテの泉』に偶然にも手を入れたことをきっかけに、神聖な力が目覚め、【女神】の力を手に入れたのである。