秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
もちろん、アゼリアは反論する。長年積み上げてきたかけがえのない絆を、ぽっと出の令嬢にいとも簡単に崩されるなど、許されない。
けれども、何を言おうが、王太子エリシオンは耳の一つも貸さない。アゼリアの言うことは何一つ聞き入れなかったのである。
婚約破棄も、秒読み。
もう……ダメだ。
ーーーしかし、ここからが青天の霹靂。
誰もがその動向を気にした卒業パーティー。
だが……王太子エリシオンの口から宣言された事とは。
色んな意味で、誰もが驚いた。
『ーーー私、ジュエリティア王国王太子、エリシオン・フィン・ジュエリティアは、この学園の卒業を以て、ここにいる……長年、絆を育んできたアゼリア・ガーネットとの婚姻をここに宣言する』
高らかにそう宣言した、王太子エリシオンが肩を抱き寄せたのは……あの、アゼリア。
件の侯爵令嬢ではなく、幼き頃から絆を育んできた婚約者のアゼリアだったのだ。
観衆は、誰もが息を呑む。そして、様々な憶測を頭に連ねた。
……王太子は、件の令嬢に懸想していたのではないのか?
『真実の愛』と謳った、あの令嬢と婚約するのではなかったのか?
なのに、何故傍にいるのはアゼリアなのか?
令嬢を取り囲んで離さなかった、学園でのあの光景はいったい何だったのだ?
ーーーと。