秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

……これは、アルフォードが王都の学園に在籍していた頃の話。

学園を卒業したのが三ヶ月前、事の噂が社交界に広まっていたのは約一年前となる。



王太子エリシオンとアルフォードらが、学園の最終学年を迎えた頃。学園では異様ともいえる光景があった。

王太子とその側近ら四名が揃って、学友である一人のとある侯爵令嬢に懸想し始めたのだという。

侯爵令嬢を見つめる視線には熱を帯びせ、愛の言葉を捧げ、手に触れ。片時も傍を離れようとせず。ただ、ただ侯爵令嬢を囲み、盲目的に愛を捧げていたのだ。

『真実の愛を見つけた。それはこの尊い女神である彼女にある』

彼らはそんなことを揃って口走っていたという。



王太子エリシオンにも側近の何名かにも将来を誓い合った婚約者がいる、のだが。

それにも関わらず、何故、全員揃って一人の令嬢に心を移したのか?

何故、上辺をかなぐり捨て、周囲の視線をも気にせず、本能に従うがまま侯爵令嬢の傍近くに侍るのか。

傍からその状況を眺めている者らにとっては、疑問でしかなかった。
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