秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
「邪魔だ、女!離れろ!」
耳元で恫喝されると同時に、髪の毛を後ろからグッと引っ張られた。
痛い!と声が出そうになったが、いちいち痛がっていられない。力に負けないように、グッとお腹に力を入れて大聖女様にしがみついた。
【秘匿されし聖女】と、神託は受けども、私はただの聖女見習い。聖力の使い方なんて知らない。
アゼリア様からもらった魔封じのブレスレットも、もうない。
許さないと憤りを感じたところで、私には反撃の術がない。
……でも、だからといって、この非常識極まりない内容の乙女ゲームとやらの横行を許すつもりは全くないのだ。
ローズマリー令嬢は、神殿を邪気で破壊するという、こんな派手な登場をしている。
だから、地上ではかなり騒ぎになっていて、この事態にお兄様なり、扉の向こうで待機していたファビオやミモザさんか誰かが気付いて助けに来てくれるのではないか、と期待している。
それまで、私がこの場を堪えていれば……なんて。
「どけ!どけろ!」
「ローズマリー様の邪魔をするな!……この女ぁっ!」