秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
アルフォード様は目を見開かせて、驚いているよう。視線の方向は、私の右頬のようだ。
「あっ。これはさっき、叩かれたり蹴られたりしてしまったもので……でも、大丈夫です」
「叩かれた?蹴られた?!」
途端に、表情がキッと険しくなる。まだこちらを取り囲んでいる男性らを激しく睨み付けていた。
「まさか、この者らも【魅了】で……!」と、呟きながら。
「ファビオ、ラヴィと大聖女様を頼む。……ミモザは俺と来い!」
「承知」
応答の声で、初めて存在に気付いた。いつの間にかミモザさんもこの場にいる。
いつもの侍女服姿に手に短剣を持って、アルフォード様と共に飛び出し、目の前に立ちはだかる敵を、得意の剣捌きと蹴りでバタバタ薙ぎ倒していくのだ。
その後衛では、アルフォード様が剣を空に翳す。刀身には、白い光ーー聖力が集まっている。
これは……聖騎士だけが使える術剣。【聖剣術】だ。
「……聖域防衛、《フェビルディスト》」
刀身が強く発光して、術陣を象る。
付近にいる男性らはその光を浴びて、悲鳴をあげながら一斉に後方に吹っ飛んでいった。