秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
聖域防衛《フェビルディスト》は、反応した邪気を薙ぎ払う術式。
技の威力は低いもので、威力は足止め程度。
今の相手は、聖騎士が日頃対峙している魔獣ではなく、邪気を浴びて精神系を操られている人間だ。
人間相手に高度な技を使用しては命を奪ってしまうから、この程度の聖剣術しか使えない。
私が不謹慎にアルフォード様に目を奪われている最中、傍ではファビオが倒れている大聖女様の肩を揺すりながら呼びかけていた。
「大聖女様……ユリ様!助けに来たよ!遅れてごめん!」
大聖女様をファーストネームで?
王太子様だけではなく、大聖女様にも馴れ馴れしいのかとギョッとしていたが……そこは私の心配するところではなかったようだ。
「ファビオ……ファビオ、ようやく来て下さいましたか……」
「だって、儀式の間の扉、開かないんだもん!結局、公子様が聖剣術でブチ破ったわ。わははは。でも、俺っち来たからもう心配ないかんね!」
薄らと目を開けて弱々しくなっている大聖女様の前では笑ってみせるファビオだったが、私は思わず「あっ!」と声をあげてしまう。