秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
「ローズ……」
向かい合って、互いに視線を重ねる二人を見て、私の心中はモヤモヤし、不安が募っていた。
まさか、アルフォード様はローズマリー令嬢の手を取るのでは……なんて。
握る拳には、自然と力を入れてしまった。
……だが、それも杞憂。
「ローズ……もう、やめるんだ。こんなことは」
「……へ?」
「【邪気】を契約して禁忌に手を出し、神殿を滅ぼそうだなんて!神殿には何の悪事も罪もない!……やめよう、ローズ」
「へ?へ?何で?どうしちゃったの、アル?」
ローズマリー令嬢にとっては想定外のことを言われたのか?アルフォード様の前では愛らしく見せていたその表情はポカンとしている。
「え?だって……アル、私言ったでしょ?神殿は悪行で民を苦しめていて、王家への謀反を企んでいるって。言ったよね?ね?」
対するアルフォード様は、首をゆるゆると横に振っていた。
「そんな事実は何処にもないよ、ローズ……」
「えっ!」
否定の意を示され、ローズマリー令嬢は少しずつ慌て出す。
「だ、だ、だって!アル、言ったよね?!私に協力するって!女神の力で悪を一緒に倒してくれるって!」