秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

この時から、学園内は騒がしくなる。

疑念を抱えた婚約者ら、嫌悪を示す女子生徒から侯爵令嬢を守ろうと、王太子とその側近らの行動は過激となっていくのであった。

ーー彼女に近づき傷付けたと思われる者を、偏った自己判断で次々と断罪し始めたのである。



件の侯爵令嬢は甘やかされて育ったのか、天真爛漫、純粋。それ故か、男性との距離が近いことで、陰ながら良くない噂があった。

大声で笑う、素直で思ったことはすぐ口にする、駆け引きをしないなど、貴族令嬢としてはマナーに欠ける部分がいくつもあり、令嬢としての評価はあまり良くないものであった。

堅苦しい貴族の世界で生きてきた令息にとっては、それはとても新鮮で心惹かれるものがあったのかもしれないが。



「……駆け引きできねえ子供が息子の嫁にくるだなんて、死んでもごめんだぜこりゃ。何が新鮮だ、安らぎだ。そんなもんでこの世界を渡っていけるなんざ、安いこった」

回想するだけで、思わず苦言が飛び出る。

「あのトルコバス侯爵と縁続きになるのもごめんでしょう、公なら」

「……そりゃもちろん」

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