秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
ローズマリー令嬢は悲鳴をあげながら、私が触れた左腕を庇った。
恐らく、契約した本人の体内は邪気の密度が高いのだ。だから反応も大きいのだと思われる。
「このっ……!」
ローズマリー令嬢は目の前にいる私を激しく睨み付けるが、私はそれに怯むことはない。
懐にもう一歩踏み込んで、今度はその身体に手を伸ばした。
「やめっ!……いやああぁぁっ!」
両手で、ローズマリー令嬢の腰を抱き込む。また、ジュウゥゥッ!とここ一番激しい音が響き渡った。
同時に飛び込んだ反動で、共に吹っ飛び体ごと奥へと滑り込む。
激しい音、焼けるような感触は、私の腕の中でずっと続いていた。
やはり、痛くも痒くもないのだが。体が……。
(熱い……)
私の体内では何かが激しく蠢いている。何かが、体の外へと放出されているよう。
体が熱い上に、体内がグラグラと揺れている感覚がする。
目を薄らと開けると……私の体は、知らずのうちに白くて強い輝きに包まれていた。
ーーこれは、聖力だ。
私の体内からじゃんじゃんと聖力が放出されている。
聖力の白い輝きは、私の腕の中にいるローズマリー令嬢の全身をも取り込んでいて。