秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
ローズマリー令嬢の周りを彷徨いていたり体内に蠢いていた【邪気】が、少しずつ弾けて消滅していくのを気配で感じていた。
【邪気】が消える……。
「ああぁぁぁっ!……いやあぁぁぁっ!」
ローズマリー令嬢の断末魔のような悲鳴が、私の耳を貫いていた。
同時にローズマリー令嬢の【邪気】がみるみると消えていくのを感じる。
これで、もう……大丈夫だ。
大丈夫。
大聖女様の御身の安全も……アルフォード様の心も。ようやく護れたのだ。
(よかった……)
ホッと安堵すると、急に体の力がガクンと抜けた。
鉛が乗っかったかのように、体全体がズシンと重くなったのだった。
そして……何だか、ウトウトと気持ち良くなっていく。
「ラヴィ?!……ラヴィ!」
はい、どうしましたか。
この声は、アルフォード様の声だ。とても素敵なお声。
声を聞いただけでも幸せな気持ちになってしまった私も大概だ。アルフォード様のこと好きすぎる。
(アルフォード様……)
だが、返答は声にはならず。
私自身も気付かないうちに、私の意識は深い闇の底へと沈んでいたのだった。
「ラヴィ!……あぁ、ラヴィ!」