秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
お母さまの高く細い声ではなく、男の人の低く太い声でハッと目が覚める。
視界に映ったのは、見たこともない天井で余計に混乱した。
ガバッと体を起こすと、体がバキバキと音が鳴って少々痛い。
でも、頭の中はスッキリしていた。
自分がふわふわの布団の中、寝台に寝かされていたこともわかる。ここはどこだろう。
そして……。
「ホームランかっとばせタイローン♪レフトーへ♪ライトへー♪わっしょいわっしょい!」
寝ていた私の傍で、歌う男が約一名。何故か?木の棒を振り回して陽気に歌っている。
え……それ、何の歌。
そのまま訝しげにじっと観察していたが、やがて歌う男ーーファビオが私に気付いたのだった。
「おぉー。ラヴィちゃんおはよう!起きたのかー」
「う、うん。おはよう。……ファビオ、何してたの」
「おう。暇だから歌ってた!」
「ほーむらんって何……」
「まあ、カタイことは気にすんな!」
そう言って、いつもの如く「わははは!」と笑うファビオ。何だか、うまく丸め込まれているような気がするのは何故か。
友人の奇行に首を傾げていた、その時。
向こうの方で、ドアが開く音が聞こえたのだった。
「……ラヴィ!」