秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
そう返すと、尊い御方は柔らかく微笑んでくれる。
ああ、この人を護れて良かった。何度も思う。
あの時、この人が居なかったら。他の誰かがいたら……突如思い出した『前世の記憶』や、自分に下された『警告』を信じてくれなかったら、自分は精神異常者として打ち首にでもなっていただろう。
ーー単刀直入にいえば。
自分、このファビオとかいう男は、異世界からの転生者である。
かつて自分は、『聖力所持者』を保護するシステムがある、このジュエリティア王国の市井のスラム街の孤児だったが、9歳の時に聖力所持が発覚。
孤児の聖力保持者は神殿の『訓練所』という暗部の訓練所にて、訓練を受け、神殿の暗部として暗躍することとなるのだ。
そうして数年の時を経て、神殿の諜報部員となった自分は、時には野菜屋の業者の息子を装い、時には庭師見習いを装い、様々な姿を変えて市井に溶け込み生活をしていた。
そんな自分が転生者だと自覚したのは、約一年前の話。
王都にある貴族学園内の定期調査のため、学園の敷地内に潜んでいた時だった。